心の命ずるままに
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手
別窓 | スポンサー広告
克彦の思い出
2013-04-30 Tue 17:45
「 思い出すままに ( 人生を綴る ) 」 平成11年 76歳
                     ~ 2013年4月24日逝去した父の手記より

昭和42年4月10日、その日は朝から曇っていた。
私は業界の会合で層雲峡温泉にいたが、夕方会食が始まろうとしていたとき、ホテル
の係員が来て、 “ 旭川の会社の事務所から急なお電話です ” という。
受話器を取ると “ 只今札幌のお宅からお電話があり、克彦さんが中学校の体育館で
事故死されたと言う知らせがありました。 急ぎ札幌にお送りするため庶務課長が
同乗して、会社の車を差し向けました ” という知らせである。

私はその前々年、函館の所長から旭川の所長に転じ、単身赴任を続けていたが、会社
の仕事が忙しく、家庭のことはすべて妻まかせであった。
あの元気な克彦がどうして事故死などしたのか、心は動転し、今その時の精神的衝撃
を述べることは出来ない。

やがて会社の車が到着し、既に暗くなった国道12号線を札幌に向ってひた走った。
克彦は如何なる死に方をしたのか、頭の中は混乱し悲しみは胸に溢れて、涙はとめど
なく、層雲峡から札幌までの2時間。 私は生れてはじめての苦しみに耐えた。
“ 後部座席から何度もうめき声が、そして、克彦 克彦と呼ぶ声が、札幌につくまで
きこえていました ” と助手席に同乗した庶務課長が後になって語ってくれた。

家に入るとむっとする焼香の臭い。 直ちに奥の部屋に寝かされている克彦の枕頭に
座し、悲しみに耐え、胸の張り裂ける思いで、吾が子の死を確認した。 □□中学校の
校長先生、教頭先生、担任の先生から、克彦の事故死の詳しい状況の説明を受け、
終ってお詫びとお悔みの言葉を述べられた。

会社の方々も多数弔問に来られ、葬儀その他のお手伝いを申し出られた。
夜が更けて客が散じた。 明日からは忙しくなるから体を休めておこうと思い、親子3人
寝つくことにした。 私は克彦の布団の中に横たわり、僅かに温もりの残っている吾が子
の亡骸(なきがら)を抱きながら寝た。 父と子の悲しい最後の夜であった。

子を一人前に育てるのは親の務めだが、不幸にして親に先立ち、若くして逝った吾が子
を、立派に葬ってやるのも、親の務めだと思った。
克彦の学校葬は、死去の翌々日、□□校長が葬儀委員長となり、教頭始め、全先生方、
同級生全員及び会社関係者が参列し、□□寺で盛大に取り行われた。

その後、□□中学校の全校生徒が校門に整列するなか、私は彼の遺骨を抱き、喪主と
して挨拶した。 次の日から何日か学校関係者、会社関係者、近隣の方々の弔問の客を
迎えて、お世話になった礼を述べ、彼の生前に受けた好意を謝した。

その後、私は□□中学校を訪ね、校長先生始め諸先生方に、お世話になった礼を述べ、
彼が学んだ学校に何か記念のものを残したいと思い、寄附を申し出たところ、先生方の
ご配慮により、生徒達が利用出来る書籍類を集めて文庫を作ることになった。
やがて文庫が完成し、 “ □□文庫 ” と名付けられた。

吾が家の今迄の賑やかな食卓は3人になり、急に淋しくなった。
克彦のことが総べて終えた6月初め、悲しみと忙しさに明け暮れた心と体を休めたいと思い、
一家3人で層雲峡温泉で遊んだ。 青葉は眼にしみ山峡は美しかったが、いるべき人が
いない旅は何かにつけて淋しかった。

克彦が逝って4ヶ月後、私は急性胃潰瘍になり□□病院で胃を3分2切除した。 余病も
併発して入院は2ヶ月に及んだ。 担当医は今までの心労が原因でしょうと言ったが、
最愛の吾が子を失った父の苦しい試練であった。

克彦は明るく、賑やかな子であった。 少しばかりあわて者で、友も多く皆に愛され、学校
では少しは信用もあったのであろう。 一年生の時も、三年生になっても学級委員長に選
ばれていた。

将来何になるんだときくと “ パパのように大きなダムや発電所を造る技術者になるんだ ”
と言って私をよろこばした。 親として、吾が子の長命を願わぬ者はない。 克彦の14年
の生涯はあまりに短い生涯であった。

彼の短かった生涯を振り返ると、その時々の俤 ( おもかげ ) がまざまざと瞼に浮かぶ。
彼の生前、私は仕事が忙しく、ろくに親らしいこともしてやれなかった。 これが悔やまれる。
彼は限りない悦びと希望を父母に与え、天の命ずるままに、父母弟を後に残した。

父44歳、母39歳、弟11歳であった。
人生の苦しみは時がいやしてくれる。
あれから三十余年の歳月が流れている。
web拍手
別窓 | 想い出 | コメント:1
<<心に太陽を持て | Your Song | 昨日と今日のハヤト>>
この記事のコメント
足跡。
…拝見させて頂きました。
2013-06-17 Mon 17:29 | URL | chicchi #FlI6r7ng[ 内容変更]
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

| Your Song |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。